あなたに

好きな人に好きだと伝えられない。
昔からそうだった。
好きだと思えば思う程、想いが膨らんでいく程、言葉が出てこなかった。
心臓の音が煩い。
こんなに静かな白銀の空の下でも。
降り続く白が示すように、気温は低く。吐く息はそれよりも純白く。
すぐにでも触れられる距離。
手を伸ばせば届く距離。
それなのに。
言葉が出てこなかった。
そのことが、こんなにも遠くする。あなたとの距離を、遠くする。
 
お願いだよ。
僕だけの人になってよ。
 
この気持ちを伝える言葉はたった二文字。
たったこれだけのことが、口にできない。
どうしてなのか、わからない。
だけど。
好きな人に好きだと伝えられない。
「あ、流れ星」
「えっ?」
音が何もない山頂。
少し開けた夜空。
指差した先に、一筋の光。
 
「あけまして、おめでとう」
 
遠くで打ち上げ花火の音が聞こえた。
まるで、映画のワンシーンみたいに。
幻想的な風景と、特別な人の笑顔。
「誘ってくれて、ありがとうな」
うん。今年こそは。
この気持ちを伝えられるように頑張ろう!